インサイド・ヒーローズ
vol.2
技と情熱で築く「明日の風景」
ご来場いただくみなさまへ
GREEN×EXPO2027のシンボルともいえる「テーマ館」。この木造建築の最大の魅力は、木材が複雑に組み合わされた独創的な形状と、その構造が生み出すダイナミックな空間にあります。一歩足を踏み入れた瞬間、木の温もりに包まれながら、テーマ展示への期待感を建物そのものから感じていただけるはずです。職人たちの技と情熱が築いた「明日の風景」を、ぜひ会場で体感してください。

空に描く戦略、現場に宿るゆとり
―モノづくりの現場で大切にされていることは何でしょうか。
中村
入社してからの25年間、主に超高層ビルの建設に携わってきました。所長としての私の役割は、現場監督たちをまとめ、全体を統括することです。工期内に高品質の建物を安全につくり上げるのはもちろんのこと、全員がやりがいと誇りを持てる環境づくりも大切にしています。

一見すると個人の趣味のように映るかもしれませんが、工事事務所でBGMを流し、盆栽を育て、ウーパールーパーを飼っているのも、そうした環境づくりの一環です。こうして生まれる心のゆとりが、現場の隅々まで目を配る余裕や集中力につながるのだと思います。現場を訪れる方々にも「建設業っていいな」と感じてもらえるように、まずは自分たちがモノづくりを楽しむことを心がけています。


―なぜゼネコン(総合建設業者)の道を選ばれたのでしょうか。
中村
学生時代に街で見上げたタワークレーンへの好奇心が原点です。建物の高さに合わせて、自らもせり上がっていく巨大なクレーン。建物が完成したあと、あの大掛かりな機材をどうやって地上に降ろすのか、不思議でならなかったのです。
その仕組みは、驚くほど緻密なものでした。まずタワークレーンが、自機より一回り小さい「中型クレーン」を組み立てる。その中型クレーンを使って自機を解体し、地上へ降ろしていく。次に中型クレーンが、さらに小さい「小型クレーン」を組み立て、同じように自機を解体して、降ろしていく。最後は残った小型クレーンを職人の手で解体し、エレベーターで搬出するというわけです。
3カ月ほどかけて繰り広げられるタワークレーンの「解体リレー」。こうした仮設計画の奥深さに触れたことが、この道へ進む大きなきっかけとなりました。
1ミリの狂いも許されない――巨大なパズルへの挑戦
―木造建築に携わるのは今回が初めてとのことですが、お声がかかったときはどのように感じられましたか。
中村
正直なところ、「……これ、本当にできるのか?」と思いましたね(笑)。
今回の建設の鍵となるのは、「CLT(直交集成板)」という木材です。木の板を縦横交互に重ねて貼り合わせたもので、強度が高く環境性能にも優れた、次世代の建材として注目を集めています。

ただ、テーマ館での使い方は非常に特殊です。たいていの建物には基準となる直線(通り芯)が通っていますが、この建物にはそれがなく、全体を通して不規則な角度でCLTを組み上げていく必要があります。一般的な建物であれば人の手で模型をつくり、組み方を検討していきますが、今回はそれでは限界があると判断し、3Dプリンタで模型をつくり、「どう組めば狂いが出ないか」を検証するところから始めました。

植えて、伐(き)って、使う――未来の森を育む50年のバトン
―園芸博のテーマと、大林組が取り組む「植林と伐採のサイクル」には通ずるものがありますね。どのような想いで取り組まれているのでしょうか。
中村
「木の伐採=環境破壊」と捉えられがちですが、森を守るだけでは脱炭素には不十分です。木は成長期にCO₂(二酸化炭素)を最も旺盛に吸収しますが、成熟するとその吸収力は次第に落ちていきます。だからこそ、私たちは木の成長に合わせた活用のサイクルを大切にしているのです。50年かけて育てた木を伐採し、建材として街の中で活用する。その跡地には新しい苗木を植え、再び50年かけて育てる。この循環によって、森全体のCO₂の吸収力を常に最大に保つことができます。
今回のテーマ館で使っているCLTも、そのバトンを受け取った命の一部です。建物が完成して終わりではなく、その先の50年、100年後の未来へ豊かな森をどうつないでいくか。この仕組みを知ることで、訪れる方々が木造建築を見る目を変えてくれたら嬉しいですね。

テーマ館工事事務所 所長
中村秀太郎
なかむら・しゅうたろう 2000年株式会社大林組入社。主に超高層ビルの建設に携わる。2005年日本国際博覧会(愛・地球博)の企業パビリオンの建設に従事。現在は、2027年国際園芸博覧会のシンボルの一つとなる木造建築の現場を統括。施工精度±1ミリ以下を追求しつつ、一人ひとりがやりがいと誇りを持てる環境づくりにも力を注いでいる。